Pentagon、Google Geminiベースの生成AIを全職員に展開|Anthropic離脱後の新戦略

|Aitly編集部

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Pentagon、Google Geminiベースの生成AIプラットフォーム「GenAI.mil」を全職員300万人に展開

2025年12月9日発表 | Aitly編集部

米国防総省(Pentagon)は2025年12月9日、Google Cloudの「Gemini for Government」を基盤とした生成AIプラットフォーム「GenAI.mil」を、文民・軍人・契約職員を含む全300万人以上の職員に展開すると発表した。Anthropicとの関係が政治的対立によって断絶された直後のタイミングであり、米軍のAI戦略における重要な転換点となっている。

Pentagon、Google Geminiベースの生成AIを全職員に展開

GenAI.milは、非機密(アンクラシファイド)業務向けに設計された国防総省専用の生成AIポータルだ。Google Geminiを第一の基盤モデルとして採用し、文書作成・情報整理・コード生成・新人研修支援など幅広いタスクに対応する。発表時点でChatGPT(OpenAI)やGrok(xAI)も同プラットフォームに統合済みであり、職員が用途に応じてモデルを選択できる設計になっている。

国防長官のピート・ヘグセス氏はプレスリリースの中で「AIはペンタゴンの業務効率を根本から変える。GenAI.milはその第一歩だ」と述べた。プラットフォームの提供範囲は当初から全職員を対象としており、単なるパイロットではなく本格的な全面展開として位置づけられている。

GenAI.mil — 主要スペック

  • 対象: 文民・軍人・契約職員を含む 300万人以上
  • 基盤モデル: Google Gemini for Government(第一弾)
  • 追加モデル: OpenAI ChatGPT、xAI Grok
  • 用途: 非機密業務(文書・コーディング・研修・情報分析など)
  • 新機能: ノーコード/ローコードの「Agent Designer」(2026年3月追加)

Anthropic離脱後の「Gemini採用」の意味

GenAI.milの発表と時を同じくして、AnthropicとPentagonの関係は急速に悪化した。Anthropicはもともと軍の機密ネットワーク上で動作する最初のAIモデルとして最大2億ドル規模の契約を結んでいたが、2026年2月27日にトランプ政権がAnthropicの製品を政府調達から排除する大統領令に相当する指示を出したことで状況が一変した。

Anthropicのダリオ・アモデイCEOはPentagonからAIの安全基準(セーフガード)を緩和するよう求められたが、これを拒否。同社はトランプ政権を提訴する姿勢も示した。Pentagon側は2026年3月6日付のメモで、全軍指揮系統に対してAnthropicのAI製品を180日以内にシステムから除去するよう命じている。

この文脈でGoogleのPoistionは際立つ。AnthropicがセーフガードをめぐってPentagonと対立する中、GoogleはGemini for Governmentを軍向け専用環境として提供し、2026年3月にはAgent Designerを追加展開するなど積極的に関係を深めている。CNBCはこの動きを「Anthropic訴訟後にGoogleがPentagonへのAIプッシュを深化させた」と報じた。

背景まとめ: AnthropicはAI安全基準の維持を優先してPentagonと決裂。Googleはその間隙を縫い、Gemini for GovernmentをDoD全体のAI基盤として定着させる戦略を取っている。

プラットフォームの概要と活用領域

GenAI.milが想定する主な活用領域は非機密業務全般だ。具体的には報告書・命令書の起草、コードの自動生成・レビュー、新人職員のオンボーディング支援、膨大な文書からの情報抽出などが挙げられている。Pentagonは軍の人材不足・予算圧縮という課題に対し、AIによる生産性向上で対応しようとしている。

2026年3月に追加されたAgent Designerは、ITの専門知識なしに職員が自分専用のAIエージェントを構築できるノーコードツールだ。GoogleはこれをGemini基盤で提供しており、各部署固有の業務フローに合わせたカスタマイズが可能になる。Breaking Defenseは「職員が自前のカスタムAIアシスタントを作れる」と報じており、現場レベルでのAI活用が加速する見通しだ。

なお、GenAI.milは非機密(アンクラシファイド)ネットワーク上で稼働する。機密情報を扱う作戦系システムへの生成AI統合は別途検討されており、GenAI.milはまずバックオフィス・管理業務の効率化を目的としたプラットフォームという位置づけだ。

Aitly編集部の見解

今回の一連の動きが示すのは、「AIのセーフガードをどこまで維持するか」という問いが、企業戦略と政治的対立を直接左右する時代に突入したという事実だ。AnthropicはAI安全性を優先することで史上最大規模の軍事契約を失い、Googleはその空白を埋めることで軍のAI基盤として地位を固めた。

300万人という規模は商業AIサービスでも稀な大規模展開だ。GenAI.milが日常業務に定着すれば、米軍はGemini依存という戦略リスクを抱えながらも、圧倒的な業務効率化を手に入れることになる。日本政府や自衛隊の生成AI導入にも影響を与える可能性があり、引き続き動向を注視したい。

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